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胃がんについて

胃について

胃イラスト

胃とは、食道と十二指腸の間にあり、食物を胃酸などの消化液で消化し、十二指腸へ消化物を押し出す器官です。

胃の部位は、4つに分けられ、

  • 1つ目は、食道から食物を噴出する噴門部(ふんもんぶ)
  • 2つ目は、消化液の胃酸を分泌する胃体部(いたいぶ)
  • 3つ目は消化されたものを押し出す幽門部(ゆうもんぶ)
  • そして4つ目は、胃の消化物を出すか出さないを調節する幽門輪(ゆうもんりん)

からなります。

胃の部位と胃がんの発生

胃がんは、幽門部の発生が約40%、胃体部が約30%、噴門部が約20%とされています。大弯より小弯の発生の方が多いと言われています。

※大弯・小弯=胃の壁の一部のこと。左側のフチが大弯、右側のフチが小弯。

胃癌の発生部位

ピロリ菌

ヘリコバクター・ピロリ菌とは、1983年オーストラリアのウォレンとマーシャルにより慢性胃炎の患者胃粘膜より発見された4本の鞭毛をもつせん状のグラム陰性菌です。

ピロリ菌はウレアーゼを分泌することで胃酸を中和して酸から自らを守っています。また、ピロリ菌はCagAとVacA蛋白を胃上皮に注入し、CagAは胃の上皮で炎症を起こします。胃上皮細胞内でチロシンリン酸化し、細胞増殖、アポトーシスの抑制など胃癌のリスクを上げる作用が発見されています。東南アジアのピロリ菌はこのCagAを持っていない菌が多く、胃癌の発生には関与が少ないです。

ピロリ菌と胃壁細胞の関係

EBウイルス

高齢者になると胃酸を分泌する胃底腺(いていせん)が減っていきます。それと並行して高齢者は胃体部の胃癌の発生が増えます。扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)の一部でEBウイルスが発がんの原因です。

胃がんを発見する検査

胃がんを発見する検査について

胃癌を発見する検査は、昔はバリウム検査でしたが、内視鏡の技術が進んだため、内視鏡検査が主流となってきています。

胃X線検査(バリウム胃透視検査)

胃X線検査は、バリウムと発砲剤を飲み、げっぷを我慢しながら胃を押されたり、大変な思いをしながら検査を受けます。胃がん検診では今でも主流です。胃がん検診での胃癌発見率は0.12%と、1000人に1人です。内視鏡では見逃してしまうスキルス胃癌や手術前の部位の特定など精密検査では欠かせない検査です。

胃透視

上部内視鏡検査(胃カメラ)

胃癌の検診から直接胃癌細胞が採取でき、ファイバースコープが細く柔らかくなり経鼻から挿入することもできるようになりました。

また、LED(発光ダイオード)の使用により多種の解析と画像の解析がハイビジョンが当たり前になり、近接することで顕微鏡に近い解析能まで進んでいるので、新しい内視鏡の機器で検査するのが安心です。

腹部CT検査

胃がんはリンパ節転移・腹膜播種・肝転移が多く、内視鏡やバリウムでは見つけられないため、CT検査と超音波検査で転移を捜し、ステージ(病期)を決め、治療方針を決定します。

腹部CT検査

腹部US検査

CT検査より優れている点は、胃癌の肝転移や腹膜播種は超音波検査が優れている時もありますので、手術前に場所の個人差もありますので必要な検査です。

腹部US検査

胃がんの症状

早期の胃がんでは症状がありません。多くの胃癌は、胃炎や逆流性食道炎などの検査で偶然に発見される場合がほとんどです。

進行した胃がんでは、胃部不快感・胸やけ・嘔気・げっぷ・黒色便・食欲不振・体重減少・腹部膨満・貧血症状である息切れ・めまいがあります。

また、噴門部の胃がんでは食べ物のつかえ感や嘔吐、幽門前部の胃がんでは腹部膨満の症状があります。末期癌になると癌性腹膜炎で腹水が溜まり腹満や腹部腫瘤が触知することもあります。

教科書的な症状としては左鎖骨上のリンパ節(通称、ウイルヒョウリンパ節)が触知することもありますが相当な進行した転移の症状です。

基本的には胃癌は根治できる数少ない癌ですので、症状が出る前に毎年の内視鏡検診で早期発見することが大切です。

胃がんのステージ

胃がんの病期(ステージ)は、1期から4期まであります。病状的には、はじめて胃がんと診断された時にステージを決定します。

胃がんのリスクについて

胃がんのリスクは、

  • ピロリ菌
  • 塩分
  • 喫煙

などが挙げられます

胃がんのリスクとヘリコバクター・ピロリ菌

慢性胃炎の人は胃癌になりやすいと言われており、特に萎縮性胃炎は前癌状態と言われています。

その原因はヘリコバクター・ピロリ菌の慢性的な感染が原因の一つです。ピロリ菌の感染は幼児に感染し、井戸水などの不衛生な水が原因と言われています。胃酸は塩酸なので塩素で消毒してもピロリ菌は殺菌されにくい性質を持っています。

日本人の50歳以上ではピロリ菌の感染は50%~70%と言われていますが、後述する除菌法は慢性胃炎まで保険適応になったことにより感染者は減って日本人の30%~50%というデータもあります。今後、胃癌の発生はさらに低下すると見込まれています。

ピロリ菌の除菌にて胃癌のリスクが低下する論文の7つをまためたメタ解析(総まとめの統計解析)にて胃癌のリスクが1.7%から1.1%にて0.6%低下したという結果でした。

胃がんのリスクと塩分

長野県が県民の塩分の摂取を減らす運動をして脳卒中・心疾患などの死亡率を低下させたのは有名な話です。

塩分摂取量が多い青森県は胃がんの発症率が10万当たり37.5人です。我が神奈川県は21.5人で長野県は18.0人です。1990年長野県の胃がん発生が一番だったのが青森県の半分になっています。これは胃癌だけでなく心臓、血管の病気も減らすことができますので減塩は健康に大切な運動です。

しかし、夏に熱中症予防で塩分をとるようにという、相反する呼びかけでどの程度の塩分摂取が適正かはまだ、結論がでていません。

胃がんのリスクと喫煙

たばこを吸わない人に比べ喫煙者では胃がんになる確率は2倍と言われています。厚労省のコホート研究では、たばこ1日10本までで胃がんの確率が1.9倍、1日20本までで2.2倍、1日21本以上で2.6倍というデータがあります。

胃がんの放射線治療

放射線治療をする際に胃は出血や穿孔(穴が空く)の心配が高く、放射線治療に向きません。

稀に胃癌からの出血を止めるために放射線治療や遠隔リンパ節転移や胃全摘術後の局所リンパ節再発でサイバーナイフなどの高精度放射線治療の適応になるい場合があります。

胃がんの手術

胃癌の手術は内視鏡手術、鏡視下手術と開腹手術の3つです。
免疫療法以外の治療に関しては標準的な治療の場合、保険診療となります。当院で実施はできません。
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