卵巣がんについて
卵巣は子宮の両側にある親指大の臓器で、女性ホルモンの分泌と、卵細胞を成熟させて排卵する働きを担っています。
卵巣がんの罹患率は、40歳代から増加し、50歳代前半で一度ピークを迎えた後減少しますが、80歳以上でまた増加します。
卵巣がんの症状
卵巣がんは症状がほとんどなく、多くの患者さまは卵巣が他の臓器を圧迫するほどがんが大きくなっていたり、他の臓器に転移した状態で病院を訪れます。
卵巣がんには転移しにくいタイプと転移しやすいタイプがあります。転移しにくいタイプの場合は、大きくなった腫瘍によって下腹部にしこりを感じたり、圧迫感がある、尿が近くなる、などの症状が現れてから多くの患者さまが受診します。
転移しやすいタイプの場合は、転移した臓器が働かないことによる症状が現れてから受診する人がほとんどです。転移後では、手術だけですべてのがんを取り除くことはできません。
卵巣がんは自覚症状がないため、定期検診で偶然発見されることがあります。特に罹患率が上昇しはじめる30歳代後半からは定期検診を受けることがとても大切です。診断では最初に、子宮や卵巣の状態を指などで触って確かめる内診を行います。
がんの疑いがあると超音波検査やCT(X線断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像法)の画像検査で、がんがあるかないか、がんの場合は子宮がんか、卵巣がんかを判定し、がんの種類や転移の有無を調べます。
また、血液中のCA125という糖タンパクは、卵巣がんができている時に非常に高い値を示すため、卵巣がんを特定する腫瘍マーカーとなります。
卵巣がんの治療
卵巣がんの治療は外科治療、放射線治療、化学療法を組み合わせて行います。 がんが小さく転移が見られない場合は、手術によって卵巣を切り取ります。手術では、がんの大きさなど状態によって片側の卵巣と卵管を切り取るケースと、両側の卵巣と卵管・子宮を含めて切り取るケースがあります。また、大網と呼ばれる大小腸を覆っている脂肪組織は卵巣がんの転移が起こりやすい臓器のため、手術の際、同時に切り取ることがあります。
がんがどこまで進行しているか分からない患者さまや転移が疑われる患者さまには手術時に後腹膜リンパ節を採取して、病理検査(顕微鏡で詳しく調べる)をする場合もあります。
がんが周囲の臓器に広がっている時は、転移のある骨盤腹膜を切り取ることもあります。がんが周囲の臓器だけでなく、全身に広がっている場合は、患者さまの状態を考慮しながらできるだけ多くのがんを切り取ります。また、がんが大きく手術が難しい場合は、手術前に抗がん剤による化学療法を行い、がんを縮小させる場合もあります。
手術後、残ったがんに対する治療として化学療法を行います。比較的抗がん剤が効きやすいがんですが、副作用もあり、白血球や血小板の減少、貧血、吐き気や嘔吐、食欲低下、脱毛、手足のしびれなどが現れることがあります。しかし、副作用を軽くする方法も進歩していて、患者さまの負担はだいぶ軽くなりつつあります。
このほか、分子標的薬を使った研究も行われており、治療方法も進歩しています。卵巣がんは早期発見が難しいがんですが、検査方法が進歩し、早期発見の確率が高まることが期待されています。