がん治療の種類について
免疫療法
癌の免疫療法について
癌の免疫療法は、
- 免疫を刺激する薬剤(BRM療法)
- 自分の免疫を加工した免疫療法
- 分子標的薬など抗体を使った治療
に分類され、BRM療法は身体の免疫力を上げる治療、免疫療法は免疫力を補充したり、免疫に癌細胞を見つける力(抗原提示力)を獲得する治療、分子標的薬は免疫抑制をブロックし、免疫が正常に働くようにする治療が現在主流です。
手術
癌の手術について
癌の手術は、外科的に皮膚を大きく切開し、開腹または開胸して行う手術がメインでしたが、現在では、内視鏡的、鏡視下、ロボットなど癌へのアプローチが皮膚の切開なし、または、小切開にて行います。
放射線治療やラジオ波にて癌を焼却するアブレーション、血管的にアプローチする血管内治療、逆に冷却する凝固治療など様々なアプローチが試されています。
がんの手術の目的
手術の目的は、短時間で癌の量を減らすことです。目に見える癌をすべて取り除く手術を根治的、主に、ステージが1期・2期・3期の一部の場合、出血・腸閉塞・疼痛など病状を改善する手術を非根治的手術、主に3期の一部と4期の場合に分かれます。
非根治手術は最近では緩和的手術とも言われています。
主な手術方法
HALS(ハルス):用手補助下腹腔鏡手術
HALS:用手補助下腹腔鏡手術 (Hand assistant laparoscopic surgery)は、内視鏡ではなく、腹腔鏡(全身麻酔で腹部にポート刺す方法)による手術です。
ステージ0期や1期で内視鏡手術で難しい場合に腹腔鏡による手術になります。リンパ節も一緒に切除できるため、悪性度が高い、リンパ節転移の可能性がある場合はHALSが適しています。ステージ2期でも手術可能ですが、再発率や腹壁転移などリスクもあります。
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
ESDは、1990年より国立がん研究センター中央病院等でITナイフが研究され、hookナイフやflexナイフが開発された2000年頃から一般化してきました。ESDは、ステージ1期までで悪性度が高くなく、切除がしやすい、そして癌の中心に凹みがない場合に適応があります。
また、リンパ節転移の可能性が少ない場合が条件です。それ以外はHALS(用手補助下腹腔鏡手術)になります。
EMR(内視鏡下粘膜切除術)
1968年に日本で高周波ポリぺクトミーが報告され、その後、1980年代に粘膜を生食で浮かせて切除するEMRが一般化しました。EMRは、ステージ0期で癌の大きさが2cm未満で悪性度が低い高分化型腺癌、切除しやすい場所にあることが適応の基準になります。
切除しにくい場合はHALS用手補助下腹腔鏡手術 (Hand assistant laparoscopic surgery)の場合もあります。
抗癌剤
抗癌剤治療とは
抗癌剤治療とは、癌を縮小する効果が期待できる化学物質を投与する治療です。そして、強い副作用の不利益よりも延命等の効果が高い場合に認められる治療です。
抗癌剤治療の目的とは
抗癌剤治療は、延命目的、または、症状緩和や統計学に有意でない期間の延命等の補助的な目的で行われています。
放射線治療
癌の放射線治療とは
広義的に放射線は、可視光、赤外線、ラジオの短波、スマートフォンのラジオ波まで含みます。一般的に放射線はX線(レントゲン)、電子線、さらに波長の短い陽子線や重粒子線の粒子線に分かれます。
放射線治療に使用される放射線の種類とは
X線、ガンマ線は電磁波(光子)、電子線、陽子線、重イオン線など荷電粒子によって分けられます。- X線と電子線は、リニアック(後述)という直線加速器によって発生します。
- ガンマ線は、イリジウム192、ヨウ素125、金198など放射性核種から放出されるものを使用します。
- 陽子線、重イオン線は、シンクロトン・サイクロトロンという大型加速器によって発生します。
X線・電子線・ガンマ線・陽子線・重イオン線の効果と副作用
放射線治療の照射の種類
放射線治療の分類は、患者さんの外から当てる外照射、患者さんの体内に放射性同位元素を取り込ませる内照射に分かれます。
ライナック(10MVX線)
ライナック(LINAC)は、リニアックとも呼ばれ、日本語では線形加速器、直線加速器とも訳されています。
照射すると3cmから5cmに吸収線量がビルドアップする特徴があり、体表に近い癌は水分と等価の物質をボーラスとして使用します。3~5cmの深さの腫瘍は、1方向から照射します。
それより深い場合は効率が悪くなるため、2方向や4方向からの照射を行いますが、最近では新しい放射線治療のIMRT(強度変調放射線治療)、多門照射のガンマナイフ・サイバーナイフなどを使用する場合が多いです。
適応癌
- 頭頚部癌(咽頭癌、食道癌)
- 乳癌
- 小細胞肺癌
- 肺扁平上皮癌
- 子宮頚癌
- 前立腺癌
など
ライナックX線外照射
食道癌に対する前後2方向照射の例
IMRT(強度変調放射線治療)
強度変調放射線治療は、出力を細かく調整することで、正常細胞への被曝を少なく、癌細胞に放射線を強く当てることができます。
また、360°身体のあらゆる方向かららせん状に当てることで正常細胞への被曝の範囲は広く、被曝量が少ない、効率的治療になります。
適応癌
- 脳腫瘍
- 頭頚部癌
- 食道癌
- 膵臓癌
- 子宮頚癌
- 直腸癌
- 肛門管癌
- 肝臓癌
多門照射のガンマナイフ
ガンマナイフ治療は、脳や頭頚部、骨盤内、特に前立腺や子宮などの呼吸や脈拍の影響の少ない臓器では効果を発揮しました。
1回の治療を通常5個まで、5mm程度の小さな腫瘍を効率よく治療できます。
また、1cm以下の小さな腫瘍であれば、10個程度まで1回の治療で照射可能で副作用も軽いです。
サイバーナイフ
サイバーナイフは、これまでの放射線治療機器とは違い、工業用ロボットの先に照射線の照射装置を付けた設計です。自動車を組み立てる作業のようにいろいろな角度から癌に照射することができます。
コンピューターとの相性がよく、全身のどの場所でも、呼吸に合わせたり、脈拍に合わせたりしやすい、今後大病院以外でも導入されやすい機器です。
重イオン線治療(重粒子線治療、炭素線治療)
今までの放射線治療は、電子を癌にぶつけてDNAを破壊したり、活性酸素(ラジカル)を発生し、間接的にDNAを破壊しています。
重粒子線治療、陽子線治療では、イオンを飛ばし、癌にぶつけます。効果はDNAを直接破壊する効果のみではありますが、通常電子は直進方向に抜けていくのに対し、イオンはある一定の距離で止まる習性があり、これをブラックピークと呼んでいます。
このことで、目標の手前や後方の臓器の損傷が軽減できます。重粒子線治療と呼ばれている機器の多くは炭素線治療機です。前立腺の治療で手術に代わる治療として行われています。 また、膵臓癌でも抗癌剤と併用して行われています。
陽子線治療
陽子線治療は、重粒子線治療の一種です。水素イオンを使用します。
全国で14カ所に設置されていますが、運用状況は不安定な施設が多いのが現状です。
小線源治療
放射線治療の内照射治療の一種、前立腺癌、舌癌など頭頚部癌、食道癌等で実施されていますが、ごく一部が良い適応となります。前立腺癌は、重粒子線、ガンマナイフ、IMRTやダビンチなどロボット手術の普及により減少しています。
小線源治療は、カプセルに入った金などの放射線物質を局所麻酔下に針にて前立腺に留置してきます。
内照射の放射性ヨウ素
ヨウ素は、甲状腺に集積性があるため、放射性同位元素のヨウ素を経口的に内服することで、甲状腺を選択的に治療することができます。
内照射の骨転移治療
ストロンチウム、ラジウムなど骨集積性ある放射性同位元素を注射することで骨転移の周囲に集積し、効果を発揮します。
しかし、骨髄抑制や疼痛などの副作用も強く、他の治療が無効な場合に選択されることが多いです。
癌の栄養療法
癌と戦うには、自分に合った栄養素が必要ですが、自分に合った癌の栄養法はみつけるのが難しいです。
癌の栄養法で、癌は砂糖だけをエネルギーにしているので、砂糖になる炭水化物(米・小麦・芋など)を減量するゲルソン療法などをベースとした栄養法が多いです。しかし、癌の患者さんでも体格も違えば、病状も違います。それぞれの患者さんにピッタリ合った栄養法で癌のリスクを低下させ、癌に負けない体力をつけることができます。