免疫療法

免疫療法について

癌に対する免疫療法は、作用の方法により大きく3つに分類されます。

  • 抗体療法
  • 自然免疫賦活療法
  • がんワクチン

の3つです。

抗体療法

抗体療法は、癌細胞の表面の受容体をカバーして成長ホルモンなど癌の増殖に関連するものをブロックする治療で、効果があり、副作用が少ない治療として注目されています。

癌細胞の表面には、細胞の増殖スイッチのEGFR(epidermal growth factor receptor:上皮成長因子受容体)が発現しています。癌細胞が分泌する成長因子が癌細胞のこの受容体につくことにより、増殖のスイッチが入り、癌細胞が分裂を始めます。(図1左)

この増殖スイッチに抗体で蓋をしてつかないようにします。(図1右)増殖のスイッチを押させないのが抗体薬です。抗体薬を使った治療が抗体療法です。

抗体薬の作用

抗体薬の種類

EGFRは、4種類あります。同じ癌種であっても違う種類の受容体をもっていることもあり、癌の一部を切除し、病理検査でEGFRを免疫染色、または遺伝子検査で確認して、一致した抗体薬を使用します。

EGFR1(肺腺癌、大腸癌、脳腫瘍など)、EGFR2(HER2)(乳癌、胃癌など)、EGFR3(BRAF・HER3・ERBB3)(悪性黒色腫、副腎癌など)のがん細胞の表面に受容体が発現しているため、抗体薬により、増殖が停止することが期待できます。

最近では抗体薬を使用していると耐性ができるメカニズムもわかってきており、効果も少なく、副作用もあり、投与期間も短いなど欠点も多く、EGFRをターゲットとする抗体薬から、癌免疫の抑制をブロックする免疫調整薬が注目されています。

また、EGFR以外にも癌細胞の表面には、悪性リンパ腫はCD20が発現しているため、抗体薬により副作用が少なく、効果が期待できるため、標準治療になっています。

VEGFRとは

VEGFR(vascular endothelial growth factor receptor:血管内皮増殖因子受容体)は、腫瘍内の血管に発現し、癌の血流を抑え、腫瘍に栄養を送らないことで効果がでるというコンセプトでしたが、実際は一時的に血管はなくなりますが、その後腫瘍血管は再生され、血流量が増えることがわかり、単独で効果はなく抗がん剤との併用でもやっと差が出る程度で費用は高く、医療費高騰を招いた薬として社会問題にもなっています。

新しい薬は、費用が高く、副作用は少ないが効果も限定なものが多く、同じ癌であっても効果がある場合とない場合のあるオーダーメイド治療になり、治療費と患者さん一人一人の適合性の中で治療を選択していく、今までのマニュアル治療でない時代になっています。

自然免疫賦活療法

自然免疫賦活療法(BRM:Biological response modular therapy)は、

  • 免疫刺激剤
  • サイトカイン療法
  • 免疫療法

に大きく分かれます。

免疫刺激剤

免疫刺激剤は、細菌毒素、キノコ類があり、一時的に免疫を上げる効果があります。

サイトカイン療法

サイトカイン療法は、インターロイキン2(リンパ球の増殖因子)、インターフェロン(ウイルス性肝炎の治療薬)などあり、一時的に免疫を上げる効果がありますが、発熱やだるさ、うつ症状など辛い副作用もあり、使用が限定されています。

免疫療法

免疫療法は、前述のインターロイキン2がリンパ球を増やし、体外の試験管内で増やすことにより、発熱やだるさなど副作用が少なく、元気になった大量のリンパ球が体内に点滴で輸血するように戻すために、体内でリンパ球が増え、免疫が高くなり、癌細胞を攻撃します。

免疫療法は、NK療法(1980年代~)、活性化リンパ球療法(1990年代~)、CTL(癌特異的リンパ球療法、2000年代~)を行われ、それぞれ毎年、改良が行われています。

DCも免疫療法に入りますが、効果は免疫を高めるのではなく、癌免疫を獲得する治療になります。CTLは、免疫を高める効果があり、特に癌細胞の攻撃が強い特徴がありますが、癌細胞を記憶する免疫獲得効果はありません。

がんワクチン

がんワクチン療法は、1989年のがんペプチドの発見から癌遺伝子解析により、現在、多くのがんペプチドワクチンが臨床試験されています。

特に大阪大学の杉山治夫先生が発見したWT1ペプチドワクチンは、20種類以上の癌腫で発現され、副作用が少なく、万能ペプチドと評判が高く、近いうちに癌の標準治療になる可能性が高く、アメリカでもNY-ESO1、MAGE-1などがんペプチドワクチンも臨床的効果があり期待されています。

がんペプチドワクチンの問題点は、抗がん剤投与した免疫が低い患者に投与するため、体内の樹状細胞がちゃんとがんペプチドを取り込み、リンパ球に伝達できるかという点です。

DC療法は、患者さんの血液から樹状細胞を誘導し、体外でDCにがんペプチドワクチンをパルスして免疫を獲得してから体内に戻す治療であり、がんワクチンで最も効果が期待できます。

第4の治療として、免疫療法のDCとがんワクチン療法のがんペプチドワクチン療法を合わせた治療が当院のDCワクチンです。

免疫療法の中のBRM療法

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