大腸がんの治療法

早期がん

ステージ0期とステージ1期(早期がん)の治療

  • EMR:内視鏡下粘膜切除術(endoscopic muosa resection)
  • ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術 (endoscopic submuosa resection)
  • HALS:用手補助下腹腔鏡手術 (Hand assistant laparoscopic surgery)
  • 開腹手術

治療による患者さんの負担は、EMR<ESD<HALS<開腹手術です。

再発転移の可能性は逆になりますが大きな差はありません。これらの治療の合併も比較的少なく安心して受けれる治療です。

EMRは、ステージ0期で癌の大きさが2cm以下で悪性度が低く、切除しやすい場所が適応です。切除しにくい場合はHALSの場合もあります。

ESDは、ステージ1期までで悪性度が低く、切除がしやすい癌の中心に凹みがない場合に適応があります。それ以外はHALSになります。

EMR
EMR

ステージ2期

ステージ2期の治療

ステージ2期は、癌が筋層から漿膜(しゅんまく)に浸潤し、癌が少し大腸の外に顔を出すまで、さらにリンパ節転移がないのが条件です。

リンパ節転移がないということは、自然に癌免疫が獲得できる可能性があります。しかし、リンパ管という大腸とリンパ節の間の免疫細胞の通路が塞がれていると、癌免疫が獲得できないため再発しやすいです。

大腸癌 ステージ2期

大腸癌の手術法

大腸は、右結腸動脈・中結腸動脈・左結腸動脈・S状結腸動脈・上直腸動脈の栄養血管があり、どの動脈を結紮(しばり切り離すこと)するかで切除範囲が決まります。

右側の結腸がん手術
左側の結腸癌手術
S状結腸癌の手術
直腸癌手術

ステージ3期

大腸がんステージ3期について

ステージ3期では、免疫細胞の交通網のリンパ管とリンパ節が癌で閉鎖されているため、癌免疫が獲得できていません。この状態では癌細胞がどんどん体の中で広がってしまいます。しかし、癌の広がりの多くは腸間膜というほとんどが脂肪の組織までしか広がっていかないため、手術切除で99%の癌が切除が可能です。

ですが、癌免疫がないために残った1%の癌が倍々に増加しやすく再発率が高いのがこのステージの特徴です。理論的には、術後のがんワクチンで癌免疫が獲得できれば再発しないという状況です。

大腸がんのステージ3期

大腸がんステージ3期の治療

手術できる場合は、開腹手術で大腸と腸間膜とリンパ節を一緒に切除します。そして、術後に再発予防目的に抗癌剤またはがんワクチンの片方、もしくは両方を行います。

大腸がんのステージ3期の治療

大腸癌ステージ4期

肝転移の治療

大腸がんの肝転移は手術切除できる場合もあります。
条件は、

  1. 長時間の手術に耐えられること
  2. 肝の転移が手術で全部切除できること(2回の手術で切除できる場合もOK)
  3. リンパ節転移など他の転移が抗癌剤などでコントロールできていること
  4. 大腸癌の元が一緒に切除または抗癌剤でコントロールできていること
  5. 肝臓の機能に余裕があることなど肝臓の癌に個数や場所よりも全身状態や抗癌剤でコントロールできるか

が判断の基準になります。

大腸癌ステージ4期で大きくない、多くない肝転移の治療

即手術できる場合

元気であること、持病がないこと、肝臓と腎臓も元気であることが肝臓の手術に耐えられる条件です。手術で癌が取り除ける条件は最大のものが5cm未満で4個まで(それ以上でも可能な場合もあります)が目安です。

肝臓の手術は、患者さんにとってかなりの負担がかかります。肝切除後に抗癌剤治療することはとてもつらく、途中で抗癌剤治療を中止することが多いのが現状です。

免疫療法では、肝臓の手術後の患者さんに抗癌剤治療はつらいものであるため、DCワクチンで再発予防します。

即手術できない場合

高齢者や持病がある場合、肝臓の手術は命にかかわります。しかし、肝転移を手術できなければ長期の予後が望めませんし、弱い抗癌剤治療では長期の予後は期待できません。

そこで、肝切除できなくてもDCワクチンで長期の予後に期待が持てます。

大腸癌ステージ4期で大きい、多い肝転移の治療

肝転移が大きい場合、無理やり手術しても、残った肝臓に癌がすぐできます。そこで抗癌剤治療で肝臓の癌を小さくしてから手術に持ち込む方法をとります。しかし、ここに大きな問題点があります。抗癌剤の治療で癌が小さくなっても、抗癌剤の副作用で肝障害が起きると肝切除ができなくなります。

大腸癌の患者さんは脂肪肝が多く、脂肪肝はイリノテカンと5FUによる副作用が多く、オキサリプラチンは類洞閉塞を起こし、手術時の出血量を増やすことがあります。現在、KRAS(ケーラス)という癌遺伝子を検査して突然変異がなければEGFR(上皮増殖因子受容体)をターゲットしたパニツスマブ(ベクティベックス®)かセツキシマブ(アービタックス®)をmFOLFOX6(モディファイドフォルフォックスシックス)に併用します。

しかし、肝切除できるのは3~4人に1人程度です。

大腸癌の45%-50%にKRAS遺伝子の変異があり、その場合、肝切除できる確率は10%-20%とかなり厳しくなります。

そこで免疫療法では、mFOLOFX6とDCワクチンや活性化リンパ球を併用することで肝切除に持ち込みに成功しています。平成27年度でKRAS遺伝子変異例で2例中2例が肝切除を成功しています。

免疫療法以外の治療に関しては標準的な治療の場合、保険診療となります。当院で実施はできません。

大腸がんについて