癌の放射線治療とは
癌の放射線治療について
放射線
広義的に放射線は、可視光、赤外線、ラジオの短波、スマートフォンのラジオ波まで含みます。
一般的に放射線はX線(レントゲン)、電子線、さらに波長の短い陽子線や重粒子線の粒子線に分かれます。

放射線治療に使用される放射線の種類とは
X線、ガンマ線は電磁波(光子)、電子線、陽子線、重イオン線など荷電粒子によって分けられます。
- X線と電子線は、リニアック(後述)という直線加速器によって発生します。
- ガンマ線は、イリジウム192、ヨウ素125、金198など放射性核種から放出されるものを使用します。
- 陽子線、重イオン線は、シンクロトン・サイクロトロンという大型加速器によって発生します。
X線・電子線・ガンマ線・陽子線・重イオン線の効果と副作用

放射線治療の照射の種類について
放射線治療の分類は、患者さんの外から当てる外照射、患者さんの体内に放射性同位元素を取り込ませる内照射に分かれます。

一番多い放射線治療、ライナック(10MVX線)とは
ライナック(LINAC)は、リニアックとも呼ばれ、日本語では線形加速器、直線加速器とも訳されています。
照射すると3cmから5cmに吸収線量がビルドアップする特徴があり、体表に近い癌は水分と等価の物質をボーラスとして使用します。3~5cmの深さの腫瘍は、1方向から照射します。
それより深い場合は効率が悪くなるため、2方向や4方向からの照射を行いますが、最近では新しい放射線治療のIMRT(強度変調放射線治療)、多門照射のガンマナイフ・サイバーナイフなどを使用する場合が多いです。
適応癌
- 頭頚部癌(咽頭癌、食道癌)
- 乳癌
- 小細胞肺癌
- 肺扁平上皮癌
- 子宮頚癌
- 前立腺癌
など
ライナックX線外照射 食道癌に対する前後2方向照射の例

IMRT(強度変調放射線治療)とは
強度変調放射線治療は、出力を細かく調整することで、正常細胞への被曝を少なく、癌細胞に放射線を強く当てることができます。
また、360°身体のあらゆる方向かららせん状に当てることで正常細胞への被曝の範囲は広く、被曝量が少ない、効率的治療になります。
適応癌
- 脳腫瘍
- 頭頚部癌
- 食道癌
- 膵臓癌
- 子宮頚癌
- 直腸癌
- 肛門管癌
- 肝臓癌

多門照射のガンマナイフとは
ガンマナイフ治療は、脳や頭頚部、骨盤内、特に前立腺や子宮などの呼吸や脈拍の影響の少ない臓器では効果を発揮ました。
1回の治療を通常5個まで、5mm程度の小さな腫瘍を効率よく治療できます。
また、1cm以下の小さな腫瘍であれば、10個程度まで1回の治療で照射可能で副作用も軽いです。

サイバーナイフとは
サイバーナイフは、これまでの放射線治療機器とは違い、工業用ロボットの先に照射線の照射装置を付けた設計です。
自動車を組み立てる作業のようにいろいろな角度から癌に照射することができます。
コンピューターとの相性がよく、全身のどの場所でも、呼吸に合わせたり、脈拍に合わせたりしやすい、今後大病院以外でも導入されやすい機器です。

重イオン線治療(重粒子線治療、炭素線治療)とは
今までの放射線治療は、電子を癌にぶつけてDNAを破壊したり、活性酸素(ラジカル)を発生し、間接的にDNAを破壊しています。
重粒子線治療、陽子線治療では、イオンを飛ばし、癌にぶつけます。効果はDNAを直接破壊する効果のみではありますが、通常電子は直進方向に抜けていくのに対し、イオンはある一定の距離で止まる習性があり、これをブラックピークと呼んでいます。
このことで、目標の手前や後方の臓器の損傷が軽減できます。重粒子線治療と呼ばれている機器の多くは炭素線治療機です。前立腺の治療で手術に代わる治療として行われています。
また、膵臓癌でも抗癌剤と併用して行われています。
陽子線治療とは
陽子線治療は、重粒子線治療の一種です。水素イオンを使用します。
全国で14カ所に設置されていますが、運用状況は不安定な施設が多いのが現状です。
小線源治療
放射線治療の内照射治療の一種、前立腺癌、舌癌など頭頚部癌、食道癌等で実施されていますが、ごく一部が良い適応となります。
前立腺癌は、重粒子線、ガンマナイフ、IMRTやダビンチなどロボット手術の普及により減少しています。
小線源治療は、カプセルに入った金などの放射線物質を局所麻酔下に針にて前立腺に留置してきます。
内照射の放射性ヨウ素
ヨウ素は、甲状腺に集積性があるため、放射性同位元素のヨウ素を経口的に内服することで、甲状腺を選択的に治療することができます。
内照射の骨転移治療
ストロンチウム、ラジウムなど骨集積性ある放射性同位元素を注射することで骨転移の周囲に集積し、効果を発揮します。
しかし、骨髄抑制や疼痛などの副作用も強く、他の治療が無効な場合に選択されることが多いです。
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