大腸がんの予防・発見・転移検索
大腸がんの予防のために
運動
運動は、1日1時間歩き1週間に1回程の汗をかく適度な運動がリスクを下げます。WCRF(世界癌研究基金より)
食物繊維
食物繊維は、1日10g以上を摂取すると10%大腸癌のリスクが減ります。(これも世界癌研究基金の2011年改訂版より)
野菜と果物
野菜と果物は、抗酸化ビタミンが豊富であり健康には良いですが、単独では予防効果は十分ではありません。食物繊維をとるためには有用な食品です。
カルシウム
カルシウムが大腸がんの予防効果があることがほぼ確実というデータが世界癌研究基金(WCRF)で出ていますが、その結果を支持する研究は失敗している現状です。
ヨーグルト
ヨーグルトは、免疫を上げる不飽和脂肪酸がリスクを上げるなど論争はありますが単独ではどちらのリスクと予防にもデータが十分でないのが現状です。ヨーグルトは栄養を補給する面では優れています。
商品の種類も乳酸菌の種類も多く、何十年も同じ量を取り続けるデータをとることは難しいため予防として論争する必要もないでしょう。
大腸がん発見のための検査
便潜血検査
大腸癌と大腸ポリープでは、便に癌が擦れることで出血を起こします。わずかな出血を検査するのが便潜血検査です。下血(便に血が混ざる)ことがあれば便潜血検査は不要です。
便潜血検査は、痔核や大腸憩室、胃潰瘍なども陽性にできることも多く、大腸癌検診で便潜血検査(免疫法)は5%-10%の受診者に陽性が出ます。
そして、2次検査(精密検査)を受けた1%の受診者に大腸癌が見つかります。日本癌治療学会雑誌2012年42号によると男性の大腸がんの有病率は年齢調整後、1万人に6.4人(0.06%)、女性は1万人に3.6人(0.03%)です。大腸癌検診受けても1000人に1人しか見つかりません。
しかし、40歳から80歳まで毎年受診すれば40回受診、100人中4人は大腸癌検診で癌が早期で見つかっているので、発症リスクをぐんと減らすことができます。(単純計算なので実際にはいろいろな論文が細かい数字を出しています。)
便潜血検査は費用が安いために検診としては有効性が高いですが30%程度は見過ごすため、便秘・下血・腹部膨満・体重減少・貧血など大腸がんの症状があれば大腸内視鏡検査をお薦めします。
直腸診
便潜血陽性と下血の多くは、痔疾患のことも多く、痔瘻(あな痔)・裂肛(切れ痔)・外痔核・内痔核(いぼ痔)・肛門周囲膿瘍などがあり、治療法と手術法が異なります。
直腸診では痔疾患の診断と直腸癌(肛門腺から7cmぐらいまで)、肛門癌の診断が可能です。

腫瘍マーカーと血液検査
大腸癌の腫瘍マーカーは、通常、CEAとCA19-9(シーエーナインティーナイン)の血液検査と貧血、肝障害があれば肝転移を疑います。
早期癌ではCEA、CA19-9は正常なことが多く、大腸がんが見つかった患者さんの約半分でCEA、CA19-9の上昇がみられます。
ステージ4期や再発の患者さまでは約70%もの上昇がみられます。
また、抗癌剤治療や免疫療法の治療中では治療効果の判定に役立ちます。
注腸造影検査
大腸癌を疑った場合、便潜血・血液検査・直腸診の次に注腸造影検査(バリウム・エネマ)か、大腸内視鏡検査を行います。
注腸造影検査は、直腸診後チューブを直腸内に挿入し、バリウムをゆっくり挿入し盲腸まで進めていきます。
デフェクト、アップルコアなどの所見があれば大腸があることを示します。
大腸内視鏡では長い大腸のどこにあるかがわかりにくいのに対して、注腸造影検査では部位が特定しやすいため術前検査には重要な検査です。

注腸造影検査の所見

大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査の進歩は著しく、ハイビジョンの画質で100倍までに拡大でき、顕微鏡でみるような血管まで確認できるため、精度が革新的に進歩しています。
しかし、2リットルの下剤を飲まないといけないことは以前と変わりがありません。
合併症の出血や穿孔(腸に穴が空く)の頻度も1万件に数件程度に減少し、安全で有効な検査と言ってもよいでしょう。
また、同時に生検することで病理検査を提出し、癌の確定診断ができます。

大腸がんの転移検索のための検査
腹部超音波検査
肝転移や腹部傍大動脈周囲リンパ節転移・腸閉塞・腎機能・水腎症・膀胱・子宮・卵巣などの浸潤程度などの状況判断に適しています。

胸部・腹部・骨盤CT検査
腹部骨盤CT検査は、造影することでリンパ節転移や肝転移を見つけることができます。
単純CT検査でも肺転移や腸閉塞、腹水、水腎症などの診断ができます。
腹膜播種はCT検査では困難な場合も多く、悪化して癌性腹水があれば診断が可能となります。

腹部・骨盤MRI検査
直腸癌の診断では、CT検査は骨の影響が強く、直腸周囲の状況はMRI検査が適しています。

全身PET-CT検査
全身の転移を発見するには適しています。また、癌の増殖程度が数値化できる特徴があります。
中条らのAJR Am J 2009年の発表によると6-10mmの腺腫は47%、11mm以上で59%がPET-CT検査で見つけれる能力があります。
1cm以上で40%見逃すのは大腸癌発見のための検査としては不十分ですが、全身の転移の発見には優れた検査と言えます。

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